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<26>以呂波(いろは)
親が子にいろは四十八文字を教えようとしますが、子は「一文字一文字教えてほしい」と願います。そこで「い」と教えると、子は「燈心(とうしん)」と答え、親が何だと尋ねると、藺(い)を引けば「燈心(とうしん)」が出ると言うのです。これは藺(いぐさ)を芯にして灯油をひたして明かりを灯すものを言ったもので、その他に「ろ」と教えると「櫂(かい)」と答え、舟には櫓(ろ)と櫂(かい)がいるのだと言ったり「ちり」と教えると座敷に塵があるから掃き集めて火にくべると言って、親の言うことを覚えようとしません。
親はそういうのを走り知恵というから、親の言うとおり、そのとおりに言いなさいと言うと、叱り方までまねしてしまいます。怒った親は子を投げとばしますが、それもまねして、子が親を投げ飛ばして逃げてゆきます。 |
| (2007.10.05) |
<27>福の神(ふくのかみ)
毎年福の神の社に参拝している二人の男が今年も参拝し豆まきをはじめると、どこからともなく笑い声がして福の神が現れます。福の神はいつも神酒(みき)を奉納し忘れていることを二人に言って、自分から催促します。
あわてて神酒を奉納すると、福の神はまず酒奉行の松尾(まつのお)の大明神に捧げ、余った神酒は自分で全部飲み干してしまいます。そして「楽しく豊かになるためには元手がいる」と二人の男に教えるます。二人が「その元手がほしいからこうやって毎年参拝しているのです」と言い返すと、福の神は「元手というのは金銀米錢(きんぎんべいせん)だと思いがちだがそうじゃないのだ。常々の心の持ち様なのだ」と教えます。
諭された二人の男のために、福の神は朝起きて慈悲の心を持つこと、人がやって来ることを嫌がらないこと、夫婦の間で腹を立てないことなど、正しい心の持ち様に大切なことを謡い舞いながら教え、最後には、くれぐれも福の神に神酒を奉納することを忘れないようにと念を押して、朗らかに帰っていきます。 |
| (2007.10.12) |
<28>松脂(まつやに)
新年の祝いに松囃子(まつばやし)をすることにした主人様。太郎冠者に言いつけて一緒に祝うお客を呼びに行かせます。みんなでめでたく「松脂やにや 松脂やにや」と囃しているとその囃子につられて松脂の精が現れます。そして松のめでたい子細を語るのでした。ご主人様が、松脂を弓の弦に塗るための薬煉(くすね)にしたいとお願いすると、松脂の精は、それなら失敗しないように自分が煉ってやろうとみんなに薬煉を煉る有様を見せ、めでたく謡い舞いながら帰ってゆきます。
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| (2007.10.19) |
<29>飛越(とびこえ)
ある男が山ひとつ向こう側でお茶会があるので日頃仲良くしているお寺の小坊主を誘って出掛けます。
ふたりでお茶会会場に向かう途中、小川があったので男はひょいと簡単に 飛び越えました。ところが寺の小坊主は臆病なため、なかなか飛び越えることが出来ません。
目をつぶって飛んでみたり、助走をつけて飛んでみたりしますが飛び越えることが出来ないので、もう寺に帰ると言い出してしまいます。すると男は手を取って一緒に飛び越えようと提案します。
それならばと小坊主は男の手を握って一緒に飛び越えますが、男は飛び越える瞬間に手を離して小坊主は 小川に落ちてしまいます。男はびしょぬれになった小坊主を見て「濡れネズミじゃ」と大笑いするので小坊主は頭にきて、
この前寺の門前であった相撲大会で男が小さい男に投げられ腰を打って、ちんがりちんがりと足をひきずっていたことを引き合いにだして男のことを大笑いします。
男も頭にきたので小坊主と相撲を取りますが、逆に小坊主に投げられ小坊主はそのまま行ってしまい、男は追いかけていきます。 |
| (2007.10.26) |
参考文献/金子 直樹 , 吉越 研「狂言鑑賞二百一番」淡交社
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